
親の死後、「知らぬ間の借金」を背負った56歳会社員の悲劇
都内の中堅企業に勤めるサラリーマンの斎藤大輔さん(仮名・56歳)。営業職として地道に仕事を続けてきて、月収は44万円。都内でひとり暮らしするには十分。さらに老後に向けた貯蓄やiDeCoの積立も着実に行っていました。
堅実な暮らしのなかで気がかりだったのが、地元の実家でひとり暮らしをしている82歳の父親の存在。母親が亡くなるまでは、家のことはすべて母任せ。台所に立ったこともないような人です。「しっかり食べているのか」「お金の管理はできているのか」「変なやつらに騙されていないか」――次から次へと不安が頭をよぎります。そこで月に1~2回、様子を見に行くのが習慣になっていた斉藤さん。父親は年金月15万円のなかで質素ながら安定した生活を送っており、特に不自由はなさそうに見えたといいます。
「大丈夫かと聞くと『年寄り扱いするな!』というのがお決まりのパターンでしたね」
ところが、ある冬の寒い日に父親が体調を崩して入院し、数日後に亡くなってしまいます。悲しみに暮れる間もなく、葬儀や各種手続きを淡々と進めていった斉藤さん。そしてすっかり春になり温かくなったある日、見慣れない封書が届きました。開封すると、そこには消費者金融からの「借金返済の督促状」。そこに記載されていた金額は、合計約1,000万円という想像もしていなかったものでした。
「最初は詐欺かと思いました。父がそんな借金をしていたなんて、まったく知らなかったんです」
信じられない気持ちのまま、複数の金融業者に連絡を取ると、どれも確かに父の名前で契約された正式な借入であることが判明。なかには10年以上も前に借りたまま、利息だけを払っていたようなケースもありました。
借金の存在を知らなかった斎藤さんは、気づいたときにはすでに「相続人」として法律上の責任を負う立場になっていたのです。