夫婦で支え合ってきた人生。突然の別れの後、残された妻を待っていたのは、想像以上に厳しい「遺族年金」の現実でした。夫の年金に頼っていた生活が一変し、「これからどうやって暮らしていけばいいのか」と戸惑う人は少なくありません。多くの人が誤解しがちな遺族年金の仕組みと、その支給額の壁。さらに2028年に予定される制度改正が、遺族の暮らしにどんな影響をもたらすのでしょうか。
なぜ、こんな仕打ちを…68歳夫を亡くした67歳妻、年金月18万円が頼りだったが「遺族年金」の現実に血の気が引く (※写真はイメージです/PIXTA)

思っている以上に「遺族年金が少ない……」

「これから、どうやって生きていけばいいのか……」

 

田中良子さん(仮名・67歳)。長年連れ添った夫の昭夫さん(仮名・享年68歳)を病で亡くしたのは、つい先日のこと。悲しみに暮れる間もなく、田中さんの頭を悩ませたのは、今後の生活のことでした。特に、収入の柱であった年金のことが気がかりで――。

 

夫婦の収入は合わせて月額約30万円。そのうち、昭夫さんの老齢厚生年金と老齢基礎年金が月18万円。田中さん自身の老齢基礎年金は約7万円、そして昭夫さんが亡くなるまではパート収入が月5万円ほどありました。しかし、昭夫さんに看病が必要になった2年前に退職していました。

 

昭夫さんが亡くなった今、頼りになるのは夫の年金から支給されるであろう「遺族年金」。漠然と、昭夫さんがもらっていた額に近い金額がもらえるのではないか、そんな淡い期待を抱いて年金事務所へ足を運んだ田中さんでしたが、そこで告げられた現実はあまりにも厳しいものだったのです。

 

そもそも遺族年金とは、国民年金または厚生年金の被保険者または被保険者であった人が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。

 

遺族基礎年金は子の要件があるので、子どもが成人している田中さんは対象外。遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者等が亡くなった場合に、その人によって生計を維持されていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母など、優先順位あり)に支給されます。今回、田中さんは支給対象となります。

 

問題は、その金額です。誤解として多いのが、「夫が受け取っていた老齢厚生年金が、そのまま遺族厚生年金として妻に支給される」という思い込み。実際の遺族厚生年金の金額は、原則として、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。また65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある人が遺族厚生年金を受け取るときは、「①死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「②死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高いほうが遺族厚生年金の額となります。また65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある場合、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となる点も注意が必要です。

 

田中さんの場合、受け取れるのは8万円弱。月18万円程度と思っていたため、月10万円もの開きがあったわけです。

 

「なぜ、こんなひどい仕打ちを受けなければならないのよ……」